新しい商品を思いついた瞬間は、期待が先に膨らみます。
私も、ざっくり計算しただけで新商品をリリースしたことが何度もあります。
ところが、いざ販売を始めてみると、競合、原価、最低ロット、送料、販売手数料、広告費が想定以上にかかり、利益がほとんど残っていないことがあります。
商品数が少ないうちは、採算が合っていない商品にも気づけるかもしれません。しかし商品が増えるほど、どの商品が資金を減らしているのか見えにくくなります。
売上は伸びているはずなのに、資金だけが減っていく。「もっと売上を伸ばさなければ」「新しい商品を仕入れなければ」と焦り、さらに資金を使ってしまう悪循環に陥ることもあります。
前話「AI秘書に仕事を依頼する|AI組織のつくり方」で紹介した全社AI秘書へ商品アイデアを伝え、商品企画と利益管理の担当タスクへ仕事を分けると、作る前の販売計画と利益試算、発売後の実績確認を一つの商品単位でチェックできます。
少し前なら、同じ仕組みをシステムとして作るには相当な費用がかかったはずです。
AIで商品ごとのデータを整理することで、利益を落としていた商品や売り方、効果が出ていない広告を見つけやすくなります。
一つの商品アイデアを、形にする5ステップ
- 誰の、どんな困りごとを解決する商品か整理する
- 市場、競合商品、価格帯、販売方法を調べる
- 原価、最低ロット、売価、粗利、損益分岐点を試算する
- 発売後の手数料、送料、広告費、値引き、返品、在庫を含む実利益を確認する
- 資金を減らさないための数字をチェックし、商品化できるかを判断する
大切なのは、「売れる商品」だけを求めないことです。AI秘書には、確認できた事実、仮定、未確認の数字を分けて提出してもらいます。
商品企画担当が、判断材料をそろえる
商品企画で見るのは、競合の数だけではありません。
- 想定する購入者と、その人が困っていること
- 既存商品が解決できていること、できていないこと
- 主な価格帯とレビューで多い不満
- Amazon、楽天、自社EC、卸売などの販売候補
- 商品ページ、広告、SNSなど、購入までの伝え方
- 法令、表示、検査、権利など、発売前に確認すべきこと
市場規模や競合情報は、調査日と出典を残し、確認できない内容は「未確認」とします。
商品企画は、これをコピペすればOK
新しい商品アイデアについて、商品企画と販売計画を一緒に整理してください。
私は一度にたくさん質問されると迷うため、必要な質問を一つずつしてください。
最初に、商品が解決する悩み、想定する購入者、商品の特徴を確認してください。
次に、公開情報を使って市場、競合商品、主な価格帯、レビューで多い不満、
販売方法の候補を調べてください。調査結果には出典URLと確認日を付け、
確認できない内容や推測は「未確認」または「仮定」と表示してください。
その後、原価、最低ロット、輸送費、検査・表示費用、販売手数料、送料、
広告費、値引き、返品見込みなど、利益試算に必要な項目を一つずつ確認してください。
売価の候補ごとに、1個当たりの確認用利益、利益率、損益分岐点、
初回発注に必要な資金を比較できる表を作ってください。
不足している数字を0円で埋めず、未確認項目と確認方法を別欄に残してください。
商品の発注、価格変更、広告出稿、公開、外部への連絡は行わず、提案までにしてください。
まず最初の質問を一つだけしてください。
利益管理担当が、構想段階で試算する
少なくとも次の項目を分けます。
- 商品原価
- 最低ロットと初回発注額
- 輸送、関税、検査、表示、パッケージなど発売前の費用
- 販売手数料・決済手数料
- 送料・出荷・梱包費
- 広告費と値引き負担
- 返品・返金・不良品の見込み
- 在庫保管費と売れ残りリスク
1個当たりの確認用利益
= 売価
− 商品原価
− 1個当たりに配分した発売前費用
− 販売手数料
− 送料・出荷・梱包費
− 広告費
− 値引き・返品などの費用
損益分岐点数量
= 回収したい固定費 ÷ 1個当たりの限界利益
限界利益とは、商品が1個売れたときに、固定費の回収へ回せる金額です。「売価 − 1個売れるごとに増える費用(変動費)」で計算します。商品原価、販売手数料、1件ごとの送料などが変動費の例です。
例えば、売価が3,000円で、商品原価や販売手数料などの変動費が1個当たり2,000円なら、限界利益は1,000円です。回収したい固定費が10万円なら、損益分岐点数量は「10万円 ÷ 1,000円 = 100個」となります。100個売れたところで固定費を回収し、それを超えた分から利益が残り始める、という考え方です。
検査、デザイン、撮影などの初期費用や月額利用料を固定費とするか、1個当たりへ配分するかは、費用の発生方法に合わせて決めます。同じ費用を変動費と固定費の両方へ入れると二重計上になるため、AI秘書には費用の分類と計算根拠も示してもらいます。
これは管理判断用の試算です。
発売後は、予想を実際の数字と比較する
発売前の試算をもとに、発売後のデータと見比べます。
- 想定より広告費が割に合わなかった
- 値引きをしないと売れなかった
- 返品や不良が多かった
- 送料や販売手数料が予想より高かった、または低かった
- 在庫が思ったより動いていない
そこで、売上表だけでなく、販売手数料、送料、広告費、値引き、返品、在庫をSKU単位でデータ化します。商品・サイズ・色など、できるだけ小さい単位で利益が出ているかを確認できる状態にすることが、とても重要です。
発売後の確認も、これをコピペすればOK
この商品の発売前の試算と、発売後の実績をSKU単位で比較してください。
元の資料は変更しないでください。
最初に、対象期間、販売先、通貨、税込・税別、売上計上基準、
SKUまたは商品コードが記録されている列を確認してください。
SKUがない場合や資料ごとにコードが一致しない場合は、推測で結び付けず、
確認が必要な対応表を作ってください。
SKUごとに、販売数、売上、商品原価、販売手数料、送料・出荷費、
広告費、値引き、返品・返金、不良品、在庫数、保管費を整理してください。
発売前の予想、発売後の実績、差額、差が生じた可能性のある理由を、
項目ごとの比較表にしてください。
SKUごとに、1個当たりの確認用利益、利益率、合計利益、
広告費を差し引いた利益、在庫に使っている資金を計算してください。
広告経由の売上が確認できる場合は、広告費用対効果も表示してください。
不足している数字は0円にせず「未確認」と表示し、
資料名、対象期間、元の列名または参照場所を残してください。
予想より費用が高かった項目だけでなく、低かった項目も示してください。
利益を減らしている可能性が高いSKUと原因を最大5件まで挙げ、
価格、広告、在庫、仕入れ数量、販売方法の改善案を比較表にしてください。
各案には期待できる効果、悪化する可能性、追加で確認する数字を付けてください。
価格変更、広告停止、発注、在庫移動などは実行せず、提案までにしてください。
売れているのに資金を減らす原因を見つける
AI秘書には、次のような兆候を探してもらいます。
- 広告費を引くと利益がほとんど残らない
- 値引きやポイント負担が大きい
- 返品率が高く、再販売できない在庫が増えている
- 低い利益のまま大量発注し、現金が在庫へ変わっている
- 販売先ごとに送料や手数料が違い、赤字の販路がある
- 未確認の費用が多く、利益が実際より良く見えている
数字が不足している場合は、赤字と断定しません。「この費用を確認しないと判断できない」と止まってもらう方が安全です。
改善案は、一つずつ比較する
原因が見つかったら、すぐに値上げや広告停止をするのではなく、売価、広告、ロット、送料、セット販売、追加発注の時期などを、一つずつ比較します。例えば、値下げと広告の変更を同時に行うと、どちらの効果がデータに反映されたのか分からなくなるためです。
AI秘書には、それぞれの案で何が良くなり、何が悪くなる可能性があるかを示してもらいます。実際の価格、広告、仕入れ、在庫の変更は、元データと影響をあなたが確認してから行います。
前話「AI秘書に仕事を依頼する|AI組織のつくり方」で紹介したAI組織では、商品企画担当の調査結果と利益管理担当の計算結果がAI秘書へ報告されます。そのため、発売前の仮定と発売後の実績を比較することで、次の改善判断までつなげられます。
リアルな数字を見ることができるから、改善できる
AI秘書に任せるのは、調査、整理、計算、比較、改善案の下書きです。最終的な発注、契約、価格、広告、公開は人間が決定します。
「売れるかもしれない」で進める前に、「売れたあと、本当に利益が残るか」を確認できる。さらに販売を始めた後は、予想と実績のずれを数字で確かめられます。
どの商品で、どの費用が想定より増えたのか。どの広告が利益につながり、どの売り方が資金を減らしているのか。感覚ではなく、商品ごとの数字を見ながら改善できます。これが、AI組織を商品づくりへ使うことで得られる「データの可視化」です。
少し前なら、この仕組みを作るには大がかりなシステムや専任の担当者が必要だったでしょう。それが今は、小規模な会社でも、手元のデータとAIを使って商品ごとの判断材料をそろえられます。本当に夢のようです。
もちろん、AIに任せれば自動的に利益が出るわけではありません。確認できた事実、仮定、未確認の数字を分け、最後は人間が判断する。この順番を守ることで、商品を増やす前に立ち止まり、資金を残すための選択ができるようになります。
次に新しい商品を思いついたら、すぐに発注する前に、AI秘書へ「この商品は、売れたあとに本当に利益が残るか確認して」と相談してみてください。


